確認日: 2026年8月28日
対象: Amazon S3のインターネット転送、リージョン間転送、CloudFront、Transfer Accelerationを見積もる人
注意: 転送単価は送信元リージョン、経路、月間合計、契約で変わります。以下の計算は公式料金ページの無料条件と表示例を使った比較用です。
S3の保存容量を小さくしても、ダウンロードが増えると請求は下がりません。逆に、大量のデータを同じリージョンのAWSサービスへ渡しているのに、インターネット向けの単価で計算してしまうこともあります。転送費は「どこからどこへ、どの経路で、何GB動いたか」で決まります。まずデータフローを一本ずつ描くことから始めます。
S3の転送で無料になる範囲
| 経路・項目 | AWS公式料金ページの表示 | 見積もり上の注意 |
|---|---|---|
| インターネットからS3への入力 | データ転送インは無料 | Transfer Accelerationを使う場合は別の加速料金 |
| S3からインターネットへの出力 | 中国・GovCloudを除くAWS全体で最初の100GB/月の無料条件 | 他のAWSサービス・リージョンとの合計で判定 |
| 同一リージョンのS3バケット間 | データ転送無料 | リクエスト、複製、保存は別料金 |
| 同一リージョンのAWSサービスへ | S3から同一リージョンのAWSサービスへの転送無料条件 | 宛先サービス側の料金とリージョンを確認 |
| S3からCloudFrontへ | CloudFrontへのデータ転送無料条件 | CloudFrontのリクエスト・転送費は別 |
無料と書かれた経路でも、すべての費用がゼロになるわけではありません。GET、LIST、PUT、S3 Select、復元、CloudFront、NAT Gateway、ログの費用は別の行です。無料枠はアカウントやサービスをまたいだ集計条件もあるため、S3だけの使用量で判定しないようにします。
インターネット出力の月額を計算する
インターネット出力は、max(出力GB−無料GB、0)×適用単価+GET・データ取得・宛先側の費用で計算します。たとえば月500GBをS3からインターネットへ出し、最初の100GBが無料の条件に該当するなら、課金対象は400GBです。送信元リージョンの料金表で単価をrドル/GBとすると、転送費は400×rドルになります。
rに0.09ドル/GBを説明用に置くと36ドルです。この0.09ドルは地域と階層を示すための仮定で、公式の日本向け見積もりを意味しません。東京リージョン、月間合計、他サービスの出力、税、割引をAWS料金表とPricing Calculatorに入力して、rを実際の表示へ置き換えます。数字を置き換えれば、同じ式を1TB、10TBへ拡張できます。
1,000GBを1,000個の1GBオブジェクトとして10回ずつ読む場合、GETは10,000回です。AWS公式料金ページの米国東部の例ではS3 StandardのGETが0.0004ドル/1,000リクエストと表示されるため、10,000÷1,000×0.0004=0.004ドルです。取得対象のクラスにデータ取得費がある場合は、ここにGB単価を加えます。オブジェクト数と転送GBを別に測る理由がここにあります。
リージョン間転送を混同しない
同じAWSアカウントでも、東京と大阪、東京とバージニアのようにリージョンが違えば、S3バケット間のコピーやアプリケーション経由の転送は別の課金条件です。CRRは宛先の保存、複製PUT、該当する取得、リージョン間転送が積み上がります。S3 Multi-Region Access Pointではデータルーティング費用もあります。アクセスを近くするための構成が、保存コピーと転送を増やすことは珍しくありません。
まず「アプリ→S3」「S3→Lambda」「S3→CloudFront」「S3→別リージョン」の4本に分け、各行へ送信元と宛先リージョンを書きます。LambdaやEC2が同一リージョンならS3との転送無料条件を使えることがありますが、Lambdaの実行、NAT、ログ、宛先サービスは別です。AWS Lambda料金、CloudFront料金、S3ストレージクラス料金を同じ構成図で確認します。
CloudFrontを経由する判断
公開ファイルを世界中へ配る場合、S3からCloudFrontへ配信する経路は、S3のインターネット出力を直接使わずに済む条件があります。ただし、CloudFrontのリクエスト数、エッジから利用者への転送、キャッシュミス時のS3 GETが発生します。キャッシュヒット率を上げても利用者側の出力はゼロになりません。ファイルのTTL、無効化、圧縮、アクセス制御を料金と速度の両方で見ます。
月1TBの動画を直接S3から配り、月1TBのうち900GBがCloudFrontのキャッシュから返る設計を比較します。直接経路ならS3出力を1,024GBとして式に入れます。CloudFront経由ならS3からのオリジン取得を100GB程度としてS3側の転送を計算し、CloudFrontのエッジ転送とリクエストを別に加えます。キャッシュが効くかはファイルのURL設計と利用者の地域で変わるため、予測だけでなく実測ログを使います。
アクセス制御が必要なファイルでは、署名付きURLやCloudFront Origin Access Controlを使います。公開バケットにして転送費を避ける方法は、データ漏えいのリスクを増やします。費用の節約より、誰が読めるか、URLをいつ失効させるかを先に決めてください。
Transfer Accelerationの追加料金
Transfer Accelerationは、利用者とS3バケットの間をAWSエッジ経由で加速します。S3公式料金ページでは、米国・欧州・日本のエッジからS3への入力は0.04ドル/GB、その他のエッジからの入力は0.08ドル/GB、S3からインターネットへの出力は0.04ドル/GB、別リージョンとの転送は0.04ドル/GBと表示されています。これは通常のデータ転送費に加算される料金です。
日本のエッジから100GBをアップロードする例なら、加速料金は100×0.04=4ドルです。通常の入力は無料条件でも、加速経路は4ドルになります。性能改善が必要な大容量アップロードで、速度向上が4ドルを上回るか、公式のspeed comparison toolで測定します。自動で速くなるとは限らず、遅い転送では加速料金が発生しない場合がある点も料金ページに記載されています。
ログ・分析・取得の副作用
S3のデータイベントをCloudTrailへ出し、アクセスログを別バケットへ保存すると、そのログ自体がPUT・保存・転送の対象になります。Inventory、Storage Lens、Storage Class Analysis、S3 Metadataなどの管理機能も、機能ごとの料金と出力ファイルの保存費があります。調査のために大量のオブジェクトをLISTし、別リージョンへコピーするだけで、通常月にはない費用が発生します。
運用担当者がコンソールで何度も一覧を開くこともリクエストです。分析用のAthena、Glue、OpenSearchへ出す場合は、S3だけの無料条件で判断できません。CloudWatchの監視料金やCloud Loggingとの比較を行う場合も、転送元と転送先を一つの表にまとめます。
データ、権限、削除を止める前に
転送を削減するためにバケットを公開したり、暗号化を外したりする必要はありません。S3 Block Public Access、バケットポリシー、IAMロール、SSE-S3/SSE-KMS、VPCエンドポイントを確認します。KMSの鍵ポリシーを変更すると、転送前の読み出しが失敗することがあります。ログや個人情報の転送先は、保存地域とアクセス者を契約要件に合わせます。
不要な転送経路を止めるときは、先にCloudFrontのオリジン、CRR、Lifecycle、イベント通知、バッチ処理を一覧化します。オブジェクトを削除しても、バージョン、削除マーカー、宛先レプリカ、CloudFrontキャッシュ、バックアップが残る場合があります。消去要求に対応するデータを先に特定し、削除ログを保管します。
契約・停止・月末確認
- 請求リージョン、無料100GBの集計範囲、税、通貨、割引契約を保存する
- 直接配信、CloudFront、Transfer Acceleration、CRRを別のシナリオで計算する
- GET・PUT・復元・分析・ログ・NATなどを転送費と混ぜない
- 転送量とキャッシュヒット率を日次で監視し、異常な公開やループを止める
- 停止後も残るレプリカ、ログ、バックアップ、契約期間を翌月の請求で確認する
Amazon S3公式料金ページのData transfer、Transfer Acceleration、Requestsの表と、S3公式Transfer Accelerationガイドを購入直前に確認します。構成を変える前に、転送の行を消すのではなく、行の経路と単価を正しく置き換える。そうすれば無料条件を使いながら、別サービスの請求を見落としにくくなります。
参照:Amazon S3公式料金、Amazon S3公式Transfer Accelerationガイド(2026年8月28日確認)。表示単価はリージョン、転送階層、契約、税で変わります。

