Amazon CloudWatchは、AWSの監視を一つに見せてくれるため、使い始めは無料に見えます。実際、AWSサービスが標準で送る基本メトリクスの多くは無料です。しかし、アプリケーションログ、カスタムメトリクス、詳細監視、Logs Insightsの検索、ダッシュボード、アラームを足すと、課金の入口が増えます。監視を減らすのではなく、何を何日残し、誰がどの頻度で検索するかを先に決める必要があります。
2026年8月25日時点のAWS公式料金では、CloudWatchは初期費用や最低利用料なしの従量課金です。無料枠にはログの取り込み・アーカイブ保存・Logs Insightsでスキャンするデータを合わせた5GB、カスタム/詳細メトリクス10個、APIリクエスト100万回、カスタムダッシュボード3個(各50メトリクスまで)などが含まれます。無料枠の条件はアカウントやサービスによって異なるため、請求書の使用量で確認してください。
最初にログGB、メトリクス数、APIリクエスト数、アラーム数、保持期間を分けます。ログをS3やOpenSearchへ転送する場合は、その宛先の保存・転送費も加算します。リージョンごとの単価があるため、AWS Pricing Calculatorで最終確認します。
主な課金単位を比較
| 機能 | 課金の考え方 | 公式料金・無料枠の例 |
|---|---|---|
| Logs | 取り込み、保存、Logs Insightsのスキャン、Live Tail | 合計5GB/月まで無料。ログ保存は料金表のGB単価 |
| カスタムメトリクス | メトリクスの数、ディメンションの組み合わせ | 10メトリクス/月の無料枠例 |
| OpenTelemetry Metrics | OTLPの非圧縮取り込みGB | 0.50ドル/GB取り込み |
| API | GetMetricDataなどの読み取り、PutMetricDataなど | 100万APIリクエストの無料枠例 |
| Dashboard / Alarm | カスタムダッシュボード、アラームの数 | 3ダッシュボード、10アラームメトリクスの無料枠例 |
| X-Ray / RUM / Synthetics | トレース、Webイベント、カナリー実行 | 機能ごとに無料枠と単価が別 |
同じログでも、保存場所と保持期間によって計算が変わります。CloudWatch Logsのルーティング自体は追加料金がない場合でも、転送先のS3、Kinesis、OpenSearch、データ転送に課金されることがあります。ログの圧縮方式ではなく、取り込む前に不要なDEBUG出力を落とす方が効果が大きいケースもあります。
ログの月額を計算する
アプリケーションとLambdaから月100GBのログを取り込み、標準のログ料金を0.50ドル/GBと仮定します。5GBの無料枠を引くと課金対象は95GB、単純計算で47.50ドル/月です。ここに30日を超えて保持するログが800GBあるなら、超過分の保持料金として0.01ドル/GB月が適用される範囲を別に計算します。ログをLogs Insightsで200GB検索しても、公式の無料枠や単価の適用条件に従うため、取り込み・保存・スキャンを一つのGBにまとめないことが大切です。
VPC Flow Logsなどのvended network logsは、通常のログと異なり0.25ドル/GBの例が示されています。ネットワーク監視を有効にした直後は、通信量の多いサブネットでログが急増しやすいため、全量保存ではなく、必要なログ種別だけをルーティングする設計を検討します。
メトリクスとアラームの見積もり
カスタムメトリクスは名前だけでなく、ディメンションの組み合わせごとに別メトリクスとして扱われます。たとえばAPIのレイテンシーを、サービス3種類×環境2種類×リージョン3種類で出すと18系列です。標準メトリクスの無料範囲と混同せず、10個の無料枠を超えるメトリクスを料金表に入れます。高カーディナリティのユーザーIDをディメンションにする設計は、分析には便利でも請求と運用の両方を膨らませます。
OTel Metricsは非圧縮のOTLPペイロードで計測され、公式ページの例では0.50ドル/GB取り込みです。1か月に30GBなら15ドルですが、属性を増やせば同じデータポイントでもサイズが変わります。Prometheus形式はサンプル数単位の別料金です。アラームは監視の価値が高いものへ絞り、同じメトリクスを複数の通知先へ送る前に、重複を整理します。
ログを残す期間とコストを制御する
- 開発環境はDEBUGを短期保存し、デバッグが終わったらログレベルを戻します。
- 本番は障害調査に必要なログと監査用ログを分け、保持期間をIAMで変更できる人を限定します。
- Logs Insightsで毎日全期間を検索せず、時間範囲とフィルタを先に設定します。
- 長期アーカイブはS3へ転送し、CloudWatchに置く期間を短くする。ただしS3の保存・ライフサイクル・取得費は別です。
EC2の詳細監視やLambdaのログ量を見積もるときは、AWS EC2料金とAWS Lambda料金を合わせてください。サードパーティの監視へ送る場合は、Datadog料金の課金単位と二重保存の有無も比較します。
契約・解約・削除の確認
CloudWatchは従量課金で、解約ボタンで全監視が一括停止するサービスではありません。メトリクス、アラーム、ダッシュボード、ロググループ、Metric Stream、Syntheticsのカナリーを個別に確認します。ロググループを削除すると調査用データも消えるため、保存ポリシー、エクスポート、監査要件を確認してから削除します。AWSアカウントを残したままワークロードだけ止めても、ログ配信やアラームが残っていることがあります。
データとセキュリティ
ログにはアクセストークン、Cookie、個人情報、リクエスト本文が混ざりやすいので、アプリ側でマスキングします。CloudWatch LogsのKMS暗号化、ロググループへのリソースポリシー、IAMの読み取り権限を分け、Logs Insightsの検索結果を外部へコピーする運用も監査します。CloudTrailのログをCloudWatchへ送る場合は、改ざん耐性とS3側の保持を含めて設計してください。
よくある質問
EC2の標準メトリクスは無料ですか?
AWSサービスが標準で送る基本メトリクスの多くは無料ですが、詳細監視やカスタムメトリクス、API取得は別条件です。インスタンス数だけで判断しません。
ログを削除すれば請求はすぐ止まりますか?
削除後の新規取り込みは止まりますが、S3やKinesisなどの転送先、保存済みデータ、別リージョンのログは残る可能性があります。
日本の料金はこの計算と同じですか?
いいえ。記事中の数値は公式ページの例を示す比較用です。東京リージョン、税、請求通貨、ボリューム階層をAWSの見積もりで確認してください。
CloudWatchは「監視を増やすほど安全」でも「安いほど正解」でもありません。障害対応に必要な粒度を決め、ログ、メトリクス、通知の寿命を分けると、収益や稼働率を守りながら請求の予測もできます。
参照:Amazon CloudWatch Pricing、CloudWatchコスト分析ガイド(2026年8月25日確認)。価格はリージョン・データ量・保持期間で変動します。

